Home / 大好き園長先生 / 千鳥台幼稚舎 新保裕子園長先生

千鳥台幼稚舎 新保裕子園長先生

編集部 PICKUP
40年前から新しい形を求めた幼保連携型認定こども園
4_2015_03_02泉の台幼稚舎(金沢市泉野町)において、40年の試行錯誤から生まれたノウハウが、しっかりと詰め込まれた幼保連携型認定こども園。それがこの「千鳥台幼稚舎」。園長曰く「私はもとから保育畑の人間じゃなかったから。どちらかというと、母親目線で幼保連携型認定こども園の運営を考えてきたんだと思うの」とおっしゃる園長先生。同じ小学校に行く子どもに教育格差をつけない。幼稚園といった既成概念なものの考え方から一歩飛び越えた幼保連携型認定こども園。その考えが「幼稚舎」という名称に表れている。彼女は幼保連携型認定こども園のほかに、「アイ愛能力開発研究所」 「EDUCARE(エデュカーレ)」なども運営されている多彩な経営者の側面も持つ。その彼女が「泉の台幼稚舎」で築き上げてきた保育実践と、この4年間全くの新天地で一から作り上げてきたご苦労を、存分に聞いてきました。

教育目線
「教育」に視点を置いた幼保連携型認定こども園
この幼保連携型認定こども園の面白いところは、一般的な保育園という形から、一歩踏み出し、養護と教育を兼ね備えた、幼児教育の分野をさらに強化したところにある。
まさに2015年4月からスタートする子育て支援新制度そのものですね。「そうです。これまでの乳幼児教育のあり方を研究・実践してきたことが、新制度のスタートと共に『幼保連携型認定こども園、千鳥台幼稚舎』として更にステップアップしました」
「保育園」というのは家庭のように温かくて安全な場所。お母さんに甘えるように、保育士に安心して甘えられる毎日が、云わば普段着のような「日常」です。しかし就学前の年長児までには時と場合によっては「集中力や緊張感」等、「非日常」で育む「心育て」も大切なのです。と話す園長先生。
千鳥台幼稚舎ならではの特色、それは子どもたちに「就学までに必要な心育て」の一つの方法として保育士以外の剣詩舞や日舞、陶芸など外部講師による習い事を取り入れて、専門性だけでなく豊かな人間性の育ちに大きな成果を上げているところにあるそうです。少しの緊張感や我慢、思いやりなどの心育ては、幼児期から少しずつ育むことが大切ですが、言葉で言って聞かせるのではなく、楽しく遊びながら育ちあうことが重要なんです。子どもたちが充分に遊ぶことができる遊具や教具が、年齢や発達に応じて沢山そろっていますが、理論に裏付けされた「ムーブメント教育」※1の導入によって「あたま」も「こころ」も「からだ」も、バランスよく育つのだそうです。教育にも力を入れられているのですね。
乳幼児教育の「教育」で大切なことは、押し付けられるもの、ではなく。どの子も持っている沢山の能力を上手に「引き出すこと」それがエデュカーレ=エデュケーション。『ムーブメント教育』の実践を詳しくお聞かせください。「これは、子どもたち一人一人の発達に目を向け、感受性や共感性を開花させるものなんです」そのムーブメント教育を保育に取り込むことでどういったことができるんでしょうか?「この教育法って、色んなしょうがいを持つ子どものために、マリアンヌ・フロスティッグさんという方が構築されたものなんだけど、元横浜国立大学教授で、和光大学教授の小林芳文博士が日本に導入された教育方法で、『人間(子ども)の健康と幸福の達成』というのを理念にしているんです。楽しい遊びや活動を通して、感覚運動、知覚運動(視知覚、身体意識、聴知覚、連合能力)精神運動を育んで、子どもの「あたま」と「こころ」、そして「からだ」をバランス良く育てられるっていうものなんだけど。私は保育園を始めて、5年目に小林先生に出会って、それからは先生(保育士)たちも含めて、研修や勉強会をして、子ども一人一人のニーズに応える教育の在り方や、他にも信頼される保育士としての心構えや態度とか…、いろんな形で保育実践できる形を作り上げてきたんですよ」と。ほほぉ~聞けば聞くほど奥深いですね。「人って小さなときから、如何に大切にされてきたか、人格を尊重されてきたかって、とっても大切な事なのね。物言えない胎児や赤ちゃん、そして1歳、2歳…と、その年齢に応じた発達を愛情をこめて手助けしてあげることが重要なの。三つ子の魂百までって言うことですね」アタッチメント※2ですね「そうです。子どもの成長発達には、お母さんだけじゃなく保育士も人格形成には重要な存在ってことですね」

保護者目線
リゾート風保育園はまるでペンション
4_2015_03_04この保育園の場所は、目の前にコンフォモール内灘(マックスバリュー)があり、その先には内灘海水浴場という立地。わたしを育ててくださったのは保護者の皆さんなんです。泉の台幼稚舎を立ち上げた当初、一人目のお子さんができたばかりの時期だったという園長先生。「自分自身が同じ母親としてさまざまなものを学ばせてもらいながら、それが保育園運営の基礎となった気がします」と。
おしゃれな外観ですね。「この辺は海水浴場などがあったりして、この街全体がリゾート地としての開発もなされていたという周辺環境もあったので、園舎もリゾート風に!環境を乱さないように気を配りました」と。でも園舎の外観もそうですが、園内もとってもオシャレ。「子どもにとって手に触れたり、目に入ってくる環境ってとっても大切だと思っているんです。できれば本物を使っていろんな形で学んでほしいとも思っているんです」確かに、園内を見渡せば、季節を感じさせるレイアウトは、ちょっとしたホテルの内装装飾の様です。
4_2015_03_07保育事業としては、延長保育、乳児保育、統合保育(しょうがいを持つ子どもの受け入れ)、一時預かり、体調不良児保育(看護師が在中)休日保育、育児相談、そして子育て支援センター(週3日)とさまざまな形で、保育サービスの充実と、子育て支援をバックアップしてくれている。「自分が母親の立場で考えれば、うれしいことだもの。目の前にスーパーもあるしね(笑)。お仕事してお迎え後にお買いものもできちゃうって、働くお母さんには助かりますよね」と園長先生。

園長先生からの子育てアドバイス
「子育てはミラーニューロン※3なのよ。これは子どもだけじゃなく、子育て中のママにも言えることだと思うの」それはどういうことでしょうか?「子を抱き、愛を育むその行動は、人が人を真似するところから始まると思うの。できれば母子以外の他者がいる環境って大事よね。たとえば昔なんかは兄弟が多かったから、お菓子などを分け与えたり、いっしょに〝いただきます“を言ってみたり。そういった生活のさまざまな行動って自然と生まれる。でも核家族の現代社会では、そういった行動を日常生活の中では経験できなくなりましたよね。昔は親兄弟や家族がやっていることを見てまねできていたんだけど」なるほどその通りですね「これはお母さんにしても同じ。子育て広場などでほかのお母さんとのコミュニケーションを通じて、お母さん自身がほかのお母さんのいいとこを見てまねる。まさしくこれが子育てミラーニューロンですね」さらに園長先生は「今の社会は子育てがしづらいのかもしれない。でも大切なことは、赤ちゃんの、いや胎児の頃の、母との記憶があるという事が科学的に分かってきました。赤ちゃんってすごいのよ。五感を活用していっぱい学んでいるの。そんな胎児から幼児期にかけて『教育』するって、実はシンプル。この時期こそ周りの大人が『している事』『考えている事』をすべて五感で吸収し、いつの間にか子どもの人格に育まれるから恐いですね。わが子を立派な人柄に育てたければ、子どもの周りの大人こそ、そんな生き方をして、一緒に人生を歩む事が一番の『教育』で、良い子育てになるのではないでしょうか」と。
「私もまだまだ未熟で、反省することばかりですが、『子どもが幸福な人生を生きるためには、親も幸福に生きて欲しい…』少しでも、そんなお手伝いができたらいいな…。と願っています」
3人の男の子を保育園運営をしながら育て上げた、お母さん園長のお言葉でした。

※1ムーブメント教育・療法は、子ども(対象者)の自主性、自発性を尊重し、子ども自身が動くことを学び、動きをとおして「からだ(動くこと)」と「あたま(考えること)」と「こころ(感じること)」の調和のとれた発達を援助します。従来の単なる体育遊びや体育指導ではなく、また、医学療法を中心とした治療訓練でもありません。対象の子どもたちだけでなく、指導者や保護者も含めて誰もが歓びと充実感を実感できる、人間尊重の教育・療法であり、今日の特別支援教育や家族支援などの要請に応えられる、いわば“第三の教育”をめざす教育・療法であるといえます。この教育・療法は、アメリカの著名な知覚-運動学習理論家である、マリアンヌ・フロスティッグ博士(Frostig.M)が、1970年にムーブメント教育・療法の理論や実践の著書を公にし、体系化を行ったものです。その中で、適切なムーブメント教育(運動)が「なぜ子どもに必要か」を明らかにし、それを教育・療法の基本として位置づけたところにその特徴があります。アメリカやドイツなど欧米では、一般の体育授業の中でも盛んに取り入れられています。日本においては、1977年に横浜国立大学教授の小林芳文博士がM・フロスティッグ博士のムーブメント教育・療法を紹介し、ライフワークとして取り組まれて以来、全国の保育園・幼稚園・小学校・中学校・特別支援学校などの教育機関だけでなく、重症心身障害児(者)施設、独立行政法人国立病院機構をはじめ医療機関、地方自治体でのニューリハビリテーションとしても広く応用されています。
※2アタッチメント(愛着) とは、乳児と特定の人物との間に作られる愛と絆、基本的信頼関係のことをいう。アタッチメントには、こどもから大人へのアタッチメントと、大人からこどもへのアタッチメントがある。乳幼児期に愛され、受け入れられることによって、こどもから大人へのアタッチメントは形成される。深いアタッチメントが形成されることによって、こどもは自分のことを認め、価値のある存在であると認識できる。また、相手を信用することができるようになる。親にとってのこどもへのアタッチメント形成は妊娠期から始まる。我が子の誕生に心から幸せを感じることによって形成されるためである。保育者の日常での乳児に対するスキンシップなどの様々な働きかけによって、アタッチメントはより深く形成されていくことになる。この時のアタッチメントがしっかり形成されているか否かで、後々のこどもの心身・知性・精神面での発達に影響を及ぼすとされている。また、成長した時にバランスがとれた人間関係を築けるかどうかにも作用すると、様々な研究結果が発表されている。アタッチメントの形成はこどもにとって大変な影響を及ぼすが、それは保育者、特に母親に及ぼす影響も大きい。昨今問題とされている産後うつ病や育児ストレスに対しても、妊娠期から出産後にかけての乳児への深いアタッチメント形成によって、その発症頻度が低くなるという研究結果が報告されている。
※3ミラーニューロン(Mirror neuron)は、ミラーニューロンの機能については多くの説がある。脳内で自ら行動するときと、他の個体が行動するのを見ている状態の、両方で活動電位を発生させる神経細胞である。他の個体の行動を見て、まるで自身が同じ行動をとっているかのように”鏡”のような反応をすることから名付けられた。他人がしていることを見て、我がことのように感じる共感(エンパシー)能力を司っていると考えられている。ヒトにおいては、全運動野、下頭頂葉においてミラーニューロンと一致した脳の活動が観測されている。